2014年5月14日水曜日

日経ホームビルダーに現場事例が掲載されました。

2013年7月下旬から12月中旬までの約5ヶ月間もの時間をかけて行いました改修工事が、日経ホームビルダー2014年5月号に現場事例記事として掲載されました。



日経ホームビルダーという雑誌は年間購読契約ですので、一般の書店で購入することはできません。主な読者は建築に携わっている業者や関連するメーカーのようです。

住宅の不具合や欠陥を具体的な事例で紹介していますので、消費者にとっても有益な情報が掲載されています。
気軽に読める機会があればよいのになぁと思います。






出版元の日経BPの担当者さんにブログへのアップの可否を問い合わせましたところ、表紙は問題ありませんが、記事に関しては読めない状態なら写真掲載OKです。ということですので、モザイクを施しています。










掲載された工事は、表紙にある「軒ゼロ住宅の雨漏り・結露」の特集に該当する事例でした。工事中にこのブログで詳細をアップしようとしていたのですが、お客様の心情を察して自粛することにしました。しかし、お客様が工学・化学系のお仕事をされていることもあってか、原因を正しく知りたいという真理への探究心によって雑誌の取材対象とさせて頂く承諾を得ましたので出版後となったこの時期にアップさせていただきます。




当初、築年数が10年を過ぎ外壁の塗装を行いたいというご要望でした。
ご挨拶と下見を兼ねた初回訪問時に「気になる所」がありましたので、お客様にそれとなくお伝えさせて頂きその場で簡単な目視調査を行いました。


建物は、木軸三階建の専用住宅。
築後年数 12年強。
屋根は、カラーベスト葺き 外壁は、窯業系(セメント系)サイディング12mm張り。



屋根に関しましては、上写真のように軒の出がゼロの典型的な狭小地スタイルとなっています。


小屋裏(屋根裏)を確認させて頂き写真撮影をおこないましたましたところ、このように真っ白。
高温多湿の典型でした。小屋裏の換気ができていない証拠です。




  外壁サイディングはコーナー部のみ縦貼りサイディングを用いてアクセント貼りとなっています。

 ここで「気になる所」は、上写真のコーキングの劣化です。縦貼りサイディングの縦方向継目がコーキング処理だけでしたので、これが劣化のより完全に切れてしまっています。かなりの確率で雨水が侵入していると判断しました。

後日、ご要望内容の見積提出と並行して取り敢えず外壁の「気になる所」のサイディングを剥がさせて頂く了解を得てこの日の作業は終了。



「 気になる所」の破壊調査。

縦貼りサイディングを剥がしたところ、やはりシロアリの食害が見つかりました。


















柱脚元

この結果、足場の設置を行い外壁サイディングをすべて撤去しての全体調査を行うこととなりました。












足場設置後サイディング全体撤去

ショッキングなことにシロアリ食害は屋根にまで及んでいることが判明し、その対策として構造的に問題のある柱の取替えを行うこととなしました。

















被害に遭った柱。

柱1辺の長さは13cmですが、ここでは8.5cmにまで食われてしまっています。













これ以外にもコーキング劣化部分からの雨水の侵入で水腐れを起こしている箇所もありました。













軸組の構造は、ピン打ち込み方式の特殊金物工法でしたので、当該メーカーに連絡を取り純正仕様に基づき構造計算を行い構造的安全性の確認をしました。

柱・金物をリフォーム用に別注し製作期間40日を待って、必要箇所を取替え。

















屋根軒先を解体

軒の出がセロのため、やはり雨漏りが発生してました。

どうやらここからの雨漏りと外壁コーキングの劣化による浸水が被害に遭った柱をシロアリが住みやすい環境を提供していたと思われます。








また、シロアリは巣別れ時羽アリになって飛びますので必ずしも地面から登ってくるとは限りません。今回の事例も外壁の隙間から直接柱部分に入り込み上記のような住みやすい環境だったため、被害が拡大したと思われます。



屋根は、軒先部分の野地合板を取替え、通気ができるように12mmの隙間を確保。


軒の出ゼロの対策として、軒先から通気の取れる換気水切りを取り付けました。

これは小屋裏空間とも繋がり外壁の通気層の排気口と小屋裏の吸気口という機能を併せ持ちます。











屋根は 砂付きガリバリウム鋼板に取り替え。

小屋裏排気用の棟換気を設置。

これで小屋裏の空気が澱まなくなります。











【工事を振り返って】

今回の事例でもし「 気になる所」に気づかないで、外壁のコーキングと塗装だけを行っていたとしたらシロアリの被害は拡大し最悪の場合建物が倒壊してしまうことさえあり得ます。

私共は、何をおいてもまず構造に関する安全性を最優先に考えますので、場合によっては大袈裟な工事提案をしてしまうかも知れません。しかしこれは医療が生命に関して重大な脅威であるかどうかを判断するのに似たような事柄です。

リフォーム時の初回訪問はそういった意味で大変重要だと思っています。お客様には少し時間的なご負担をお掛けしますが、場合によっては後日再調査を行うことも度々です。
構造に関する箇所は全体を診ることのできない工事業者の見切り判断で適当な工事を行うことは大変危険に思います。

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